【2023注目の逸材】
なかむら・ひなつ中村緋夏
※プレー動画は➡こちら
【所属】宮城・大崎ジュニアドラゴン
【学年】6年
【ポジション】一塁手兼三塁手兼投手
【主な打順】二番、三番、四番
【投打】右投右打
【身長体重】155㎝50㎏
【好きなプロ野球選手】山本由伸(前オリックス)、岡本和真(巨人)
※2023年12月10日現在
2023年は主要な全国大会ですべてプレーしたことになる。
7月末には県女子選抜のオール宮城ブルーリボンの主将として、NPBガールズトーナメントで3回戦まで進出。大崎ジュニアドラゴンでは背番号3の一・三塁守兼投手で、8月の全日本学童大会1回戦ではV候補の多賀少年野球クラブ(滋賀)に対して、先制二塁打を放つなど勝利に貢献した(2回戦敗退)。そしてこの12月、ポップアスリートカップ全国ファイナル(ポップ杯)では四番も張って銀メダルに輝いている。
「小学生の甲子園」とも言われる全日本学童大会は、実に4大会連続7回目の出場という強豪チームにあって、5年時の昨年も六番・一塁でスタメン出場(1回戦敗退)。最終学年の今年は堂々たる中軸選手として、全国区の強豪チームをリードしてきた。
県女子選抜チームでは主に一番・三塁の主将として全国16強入り
そんな中村緋夏については、キャリア13年の岩崎文博監督も一目置いてきたという。「彼女はとにかく、意識が高い。体づくりにしても野球のことについても熱心で努力をする。自分から声も出るし、チームを仕切るボスですよ」
フィールドの外では、表情も口ぶりも穏やか。仲間の輪に自然に溶け込んでいる、どこにでもいそうな小学6年生だ。気負いのようなものは感じられない。
「男女の違いとかはあまり意識していないというか、そんなに感じていないです。女子チームはみんな優しくて支え合える。自分のチームに帰ると、ここで野球をしてきて良かったなと感じます」
試合が始まると自ずとスイッチが入るのだろう。打席から一球ごとに発する「いくぞ!」という気合い(上写真)は、異性として注がれる眼差しを遮断するかのよう。スイングはシャープで押し込みも効いている。通算でホームランは13本、アベレージは5割近くをマークしている。
「公式戦で90mを超えるホームランもありましたけど、自分の持ち味は、とにかくきれいなヒットを打つことです」
一塁から内野陣へゴロを転がす動作だけでも、きれいな腕の使い方が目につく。女子選抜では三塁手と投手を兼任。投球の間隔やリズムを意図的に変えて、打者の打ち気をそらしたり、タイミングを狂わせるのが得意だという。
「将来はプロになって活躍して、ここのチーム(大崎ジュニア)に恩返しをしたいと思っています」
通算13本塁打。飛距離はチームでも1、2を争うという
2人姉妹の妹で、2つ上の姉は野球とは無縁。中村も実は幼いころから女子サッカーに興味が向いていたが、3年生で入ったのは野球チームだった。
「お父さんが元野球選手だった、というのもあって、やっぱり野球がやりたいな、と思いました」
父・洋介さんは地元大崎市の強豪私学・古川学園高から東北学院大まで硬式野球部でプレーした。社会人軟式の仙台銀行を経て、母校・古川学園高の監督に就任。東北大会までチームを導いた実績もあるが、野球を始めた次女をサポートするために指導現場を離れている。
「緋夏が自分から野球をしてくれたことに感謝しています。今のチームに入れたことは、あの子の人生にとっても大きなことだと思います」(洋介さん)
ポップアスリートカップ全国ファイナル。決勝戦直前のセレモニーより
大きな目標に向かって結束し、同じベクトルで歩んでいる。大崎ジュニアの魅力と強さの秘訣はそこにあると、洋介さんは語る。仲間と切磋琢磨する愛娘から求められれば、自主練習もサポートするが、強要をしたことがないという。
「緋夏には『努力することがあなたの才能ですよ』という話はしますね。試合で打てなければ、帰ってきて自分でスイングしていますし、ホントに僕が『もう、やめてくれ!』と言うくらいに練習する。表には出さないけど、不安な部分もいっぱいあるんだと思います」
中学野球の進路は熟考中。現状では男子の中に入っても際立つプレーヤーだが、いずれは体格とパワーの壁にぶつかるだろうし、高校ではルールの壁も待ち受けることは承知しているという。
「甲子園(高校女子の夏の決勝戦)でめっちゃ、やってみたいです。その後は巨人(女子チーム)に入りたい」
巨人女子チームで活躍するのが夢だという
夢がはっきりとしている努力の天才。中学で所属するチームによって、そこが変わることはまずないだろう。
12月23日からは卒団前の最後の公式戦。県グランドチャンピオンシップ大会兼鉄平杯が待っている。
「これまでホントに厳しい練習をみんなで乗り越えてきたので、一戦ずつ勝ち取っていきたいと思います」
(動画・写真・文=大久保克哉)